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妊活お役立ちコラム

2024/10/03

不妊治療解説

胚移植|自然周期移植とホルモン補充周期移植のメリットデメリット

無事に採卵が終わり、ついに移植。

病院から移植の流れの説明を受け、たくさんの薬を処方される。

薬の管理をしている時にふと、移植した人のブログを見ると薬を使わない自然周期で移植をする方法があることを知る。

病院から言われるがままにホルモン補充周期で移植をするけど、実はホルモン補充周期より自然周期の方が妊娠しやすいのではないかと不安になってしまった。

そんな方にホルモン補充周期・自然周期のメリット・デメリットについて解説します。


  1. 1. そもそもホルモン補充周期胚移植とは?
  2.  1-1 ホルモン補充周期胚移植のメリット
  3.  1-2 ホルモン補充周期移植のデメリット
  4. 2. 自然周期胚移植とは
  5.  2-1自然周期胚移植のメリット
  6.  2-2自然周期胚移植のデメリット
  7. 3. ホルモンの補充周期胚移植は妊娠中影響する?
  8. 4. どんな移植の方法が良いの?
  9.  4-1 SEET法(シート法)
  10.  4-2 二段階移植
  11. 5. 子宮の「育てる力」を養おう
  12. 6.1人目の移植とは別の移植法によって妊娠した患者様
  13. 7 まとめ


そもそもホルモン補充周期胚移植とは?

ホルモン補充サイクルの使い方は?
胚移植とは採卵し、培養した胚を子宮に戻すことです。

胚が5日目胚盤胞を移植予定の場合、子宮を排卵5日後のコンディションで
3日目初期胚を移植予定の場合は排卵3日後の状態に整える必要があります。

ホルモン補充周期は薬で調整して子宮環境を整えます。

女性の生理周期は生理が始まって約2週間低温期のホルモンであるエストロゲンが分泌され、その後約2週間高温期のホルモンであるプロゲステロンが分泌されます。

生理が始まる頃にエストロゲンの補充のために貼り薬や錠剤を服薬して内膜を厚くさせます。

そして内膜が厚くなったら膣剤や錠剤などでプロゲステロンを追加します。

プロゲステロンを補充してからは凍結する胚に合わせて移植の時期を決定します。

3日目胚の場合は原則プロゲステロンを補充して3日目に、胚盤胞の場合は補充して5日目に移植します。


ホルモン補充周期胚移植のメリット

ホルモン補充周期胚移植には以下のメリットがあります。

  • ・あらかじめ移植日を決めやすい
  • ・自力で排卵しにくい、内膜が熱くならない人にも対応できる
  • ・通院回数が少ない
  • ・安定してホルモンをコントロールできる


ホルモン補充周期のデメリット

一方ホルモン補充周期には以下のデメリットが挙げられます。

  • ・貼り薬でかゆみやかぶれの可能性がある
  • ・薬の管理が大変。妊娠9~10週ぐらいまで管理が必要
  • ・薬の分だけ費用が発生する


自然周期胚移植とは

では自然周期胚移植とはどんなものでしょうか?

ホルモン補充周期では薬でホルモンをコントロールして、移植日を決めましたが、自然周期の場合は排卵日を見極め、移植する胚に合わせて移植日を設定します

そのため、移植周期は採卵周期と同様、排卵前に卵胞の大きさやホルモン値から排卵日を決定します。

排卵直前になったところで、点鼻薬などを指定した時間に使用して決まった時間に排卵させます。
そしてホルモン補充周期胚移植と同様、移植する胚に合わせて移植日を決定します。



自然周期胚移植のメリット

自然移植胚周期のメリットには以下が挙げられます。

  • ・薬の管理がホルモン補充周期に比べて少ない
  • ・薬の費用がが安価


自然周期胚移植のデメリット

一方、自然周期胚移植のデメリットにはこのようなものがあります。

  • ・移植日が直前にならないと決まらない
  • ・移植日が近くになると、通院回数が増える。
  • ・自力排卵できる人に限られる


ホルモンの補充周期胚移植は妊娠中影響する? 

これまでホルモン補充周期と自然周期と違いを述べてきましたが、ホルモン補充周期胚移植は妊娠中の合併症に関係するという論文が発表されるようになりました。

徐クリニックARTセンターではホルモン補充周期胚移植による妊娠合併症について以下のように述べています。

ホルモン補充周期の融解胚移植は、他の移植方法と比較すると帝王切開率が高く、多量出血のリスクである癒着胎盤の発症率が高い。可能な限り凍結融解胚移植は、自然周期にすることが望まれる


では具体的にどのような合併症が起きやすいのでしょうか?

ホルモン補充周期胚移植の場合は

  • ・遅発型妊娠高血圧症候群(妊娠34週以降の妊娠高血圧症候群)
  • ・低置胎盤
  • ・前置胎盤
  • ・癒着胎盤
  • ・胎盤遺残
が発生しやすくなると言われています。


体外受精により妊娠成立し,2018年から2020年に当院で分娩した症例の内,診療録に移植時の情報(新鮮胚移植・排卵周期凍結融解胚移植・ホルモン補充周期凍結融解胚移植)が記載されていた症例を抽出した.それらの症例の母体情報・周産期合併症を後方視的に収集した.新鮮胚移植症例と排卵周期凍結融解胚移植症例を自然周期群(n=58)とし,ホルモン補充周期群(n=145)と周産期予後に関して比較検討した.
【成績】ホルモン補充周期群 vs 自然周期群で,年齢,経産,人工妊娠中絶歴,帝王切開歴はいずれも有意差を認めなかった.産科合併症として臨床的癒着胎盤が21例(14%) vs 2例(3%)(p=0.025),慢性高血圧症を除くHDPが19例(13%) vs 2例(3%)(p=0.041)と有意差を認めた.HDPの発症時期に関して,遅発型がホルモン補充周期群と自然周期群それぞれで18/19例(95%),1/2例(50%)と大半を占めていた.


ホルモン補充周期胚では黄体が形成されないまま移植することが1つの要因と考えられています。

妊娠中に特に顕著に分泌されるホルモンであるリラキシンは血管を拡張させ、骨盤周りの靭帯を緩める働きがあります。

リラキシンが分泌されることで妊娠を維持し分娩を補助します。

リラキシンは黄体・子宮・胎盤などから分泌されます。

そのため、黄体が形成されないホルモン補充周期では妊娠合併症リスクが上昇すると考えられています。


妊娠中の鍼灸治療についてはこちらで解説しています。



どんな移植方法がいいの?

女性の場合の移植方法

移植の方法は大まかに分けるとこの自然周期移植とホルモン補充周期の移植になりますが、これらの移植にもう少し手を加えた方法もあります。

SEET法(シート法)

シート法では胚盤胞まで培養した際に使用した培養液を別にとっておき凍結します。

別の移植周期に胚盤胞を移植する2,3日前に凍結しておいた培養液を融解して子宮に注入します。その後に胚盤胞を移植します。



第二段階移植

二段階移植ではまず排卵から2日後に初期胚を移植します。

そしてその3日後に胚盤胞を移植します。

つまり同じ周期に2つの受精卵をタイミングをずらして移植します。

自然妊娠では卵管内で受精した卵は数日かけて内膜に着床します。この間に受精卵から子宮内膜へ着床しやすくするサインを送っているとされています。

シート法、二段階移植ではこのサインを移植前に送り、着床しやすい状態に近づけます。

そのサインを送る方法が培養液の注入、初期胚の移植となります。


シート法、二段階移植で画期的に妊娠率が上がったという訳ではありません。

しかしいいとされる卵を移植してもなかなか着床しない、そういう方に新たに試すことができる方法といえるでしょう。


シート法、二段階移植についてはこちらで解説しています。


今まで移植のやり方で妊娠率は変わらないと述べてきました。

しかし、患者様それぞれに合った方法はあると言えます。

内膜が厚くなりにくい、排卵が安定しない場合は自然周期を試みてもスムーズに移植ができません。

そういう場合はホルモン補充移植が適しているといえるでしょう。

また内膜、排卵に問題ない方が毎回ホルモン補充周期で移植してもうまくいかなかった場合は、自然周期移植を試す価値は十分あると思います。

移植の方法は病院からベストな選択をしてもらえるでしょう。

あと自分自身の子宮で「胚を育てる力」を上げる力を身につけていくことがお勧めです。


子宮の「育てる力」と養おう

移植時にはホルモン値や内膜の厚さは8mm以上など客観的な基準があります。

あとはあなたの子宮自身の育てる力が大切に!

例えば、4AA以上のグレードを7回以上移植しても一回も着床したことがなく、8回目の移植時に当院へ来院された方がおりました。

8回目は残念でしたが、9回目で妊娠されました。

ご年齢も若く今までの8回の移植の受精卵全てに問題があるとは思えません。

受精卵のグレードはいいので、着床障害が原因ではないかと言われる方もたくさんいらっしゃいます。

そのため育てる力を養い、子宮環境を整えることは重要なのです。

移植日までに身体づくりをしておいて育てる力を上げておきましょう。



1 人目の移植とは別の移植法で妊娠した患者様

女性の移植方法と治療

2人目治療中の38歳Aさんは当院に通われている患者様からの紹介で来院されました。

Aさんは1人目の治療で凍結した胚があり、来月移植を控えていました。

第1子の妊娠の際はホルモン補充周期で移植しており、今回も同じやり方で移植するとのことでした。

週に1回鍼灸治療を行い、移植に向けて身体づくりをし、グレードが2、7分割の胚を移植したものの判定日のhcgは1。

「着床はしているけど、すぐに流れるでしょう」という医師の言葉通り、すぐに生理がきました。

今回の移植がうまくいかなかったため、Aさんは採卵から始まります。

これまで毎回ホルモン補充周期で移植していましたが、なかなかうまくいかず悩んでいたため、私から「転院を視野にいれてみては?」と提案しました。

いくつかの病院を紹介し、Aさんは転院を決意されます。

転院先の病院では1周期目は新鮮胚での移植を提案されました。

2つ採卵し、2日後には移植です。

Aさんはグレード3、5分割の胚を移植したところ、12日後の判定日では無事に着床しました。

Hcg151.5で、前回と比べてしっかりと着床していました。

その後も病院から「特に言うことはない。」と言われるほど経過は順調で無事にご出産され、当院にもご出産報告が届きました。

1人目の治療の際、ホルモン補充周期でうまくいくと同じやり方で試したいと思うことは多々あるかと思います。

しかし、1人目治療のやり方にこだわらず、自然周期での移植で妊娠に至った症例と言えます。

Aさんからはご出産報告をいただいています。




まとめ

ホルモン補充周期胚移植と自然周期胚移植はそれぞれメリット・デメリットがあります。

その方に合ったものを病院は選んでいますが、どちらも適応の患者様には病院が得意とするやり方を選ぶ傾向があるように感じます。

今までやったことがない方法で移植をしたいと希望した際は積極的に病院と相談してできたらと思います。



この記事の著作者

鍼灸師 あんまマッサージ指圧師 楠本 敦子

「東京漢方鍼医会」会員

より詳しい内容はこちらをクリックしてご覧ください。

この記事の著作者

院長 松本 敏樹

不妊カウンセリング学会 認定不妊カウンセラー
一般社団法人「日本生殖医学会」会員
妊活コーチ/妊活コーチング
東京漢方鍼医会 代表

より詳しい内容はこちらをクリックしてご覧ください。
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