
妊活お役立ちコラム
2025/09/22
おうち妊活
着床しない原因はこれ?〜着床不全を引き起こす妊活中の銅亜鉛の比率〜

突然ですが…
「ERA検査もPGT-Aしたのに、なかなかうまくいかずつらい…」
「移植の時のホルモン値や内膜の厚さも問題ないのに、なんでかすりもしないのだろう」
「検査も全て陰性で、原因がわからず、他に何をすればいいのかと途方も暮れてしまう」
など悩んでいる方は少なくないと思います。
かつては着床しない原因の多くは卵の質だと言われていましたが、最近では、子宮環境をみるERA検査や着床不全の検査を行うことも増えてきました。
そのなかの一つとして、
「銅と亜鉛のバランス」
が着床不全の原因の一つとなっている可能性があるかもしれません。
始めに大事なことをお伝えすると、銅も体にとって必須ミネラル。
銅と亜鉛はバランスが大事です。
そのバランスを取るために亜鉛を多めにとるということが重要になります。
今回身体の中で起こっている銅・亜鉛の働きや妊娠に近づくためのベストな比率についてお伝えします。
【もくじ】
- 01銅・亜鉛について
- 02銅と亜鉛の必要量
- 03亜鉛を摂る際の注意点
- 04亜鉛のサプリについて
- 05事例
- 06まとめ
銅 亜鉛について
「銅」と「亜鉛」は血液中のミネラルであり、各々細胞の機能に関わる微量金属です。
まずはこの二つのミネラルが身体にどう影響するのか説明していきます。
銅の働き
銅は、体の中で骨、骨格筋、血液を中心として成人で約80mg存在しています。
赤血球中のヘモグロビンという赤い色素は鉄を成分としていますが、
銅はこのヘモグロビンをつくるため鉄を必要な場所に運ぶ役割をしています。
そのため鉄が十分にあっても銅が無ければ、赤血球を作れず貧血になってしまいます。
また、銅は体の中の数多くの酵素となって、活性酸素を除去するなどの働きをしたり、骨の形成を助けたりする役割もしています。
亜鉛の働き
亜鉛は、アミノ酸からのたんぱく質の再合成、DNAの合成にも必要なので、胎児や乳児の発育や生命維持に非常に重要な役割を果たしています。
ほかにも、骨の成長や肝臓、腎臓、インスリンを作るすい臓、精子を作っている睾丸など、新しい細胞が作られる組織や器官では必須のミネラルとなります。
また体の細胞にダメージを与える活性酸素を除去する酵素の構成成分であるほか、味覚を感じる味蕾細胞や免疫反応にも関与しているのです。
銅も亜鉛も重要な働きをしているのがわかったと思います。
銅と亜鉛の関係
実は、銅と亜鉛は拮抗する働きを持っています。
簡単に言うとシーソーみたいに銅が増えれば亜鉛が減り亜鉛が増えれば銅が減るのです。
そうなってしまうのも、銅も亜鉛も吸収経路が同じ小腸の上部、そして同じ吸収するタンパク質を介して体内へ吸収されるからです。
そのためより濃度が高い方が吸収されやすくなってしまうのです。
銅と亜鉛の基準値
それでは、妊娠しやすい身体づくりのために、どんな割合がいいのでしょうか。
こちらの論文を紹介いたします。
グループ間で年齢やBMIに有意差は観察されなかった。銅濃度は、グループNP(平均193.2 μg/dL)でグループP(平均178.1 μg/dL)よりも有意に高かった。臨床妊娠率の予測のための受信機動作特性曲線の曲線下面積(AUC)によると、Cu/Zn比(AUC 0.64、95%CI 0.54–0.71)は、銅または亜鉛よりも優れた予測因子でした。Cu/Zn比のカットオフを1.59/1.60に設定すると、感度、特異性、正の予測値、負の予測値はそれぞれ0.98、0.29、0.71、および0.88でした。(yahoo翻訳)
【血清中の銅濃度が高いことは着床不全の危険因子ですか?】①
この論文には、Cu/Zn比が 1.60以上だと「妊娠できない可能性が高い」と判断できるとしています。
そのため、妊娠を希望している方の銅/亜鉛の比率は1.6未満が望ましいといえます。
銅と亜鉛の必要量
日本人の食事摂取基準(2025年版)②では、
亜鉛の必要な摂取量として、成人男性で11mg/日,女性で8mg/日が推奨されています。
銅の場合は、男性で0.8〜0.9 mg/日,女性で0.7mg/日となります。
一方、実際の摂取量は令和元年の国民健康・栄養調査結果の概要③によると、
亜鉛は、男性で9.2mg/日、女性で7.7mg/日であり、
銅は、男性は平均1.20 mg/日、女性は平均1.04mg/日摂取しているとしています。
これを見てもわかるように、銅は必要な摂取量以上に摂取していますが、亜鉛は男女共に足りていない傾向があります。
亜鉛を摂る際の注意点
亜鉛の吸収を阻害するものもあります。
それは
- ・豆類や穀物に含まれる、「フィチン酸塩」
- ・食物繊維を多く含む食品:海藻、キノコ類、玄米など
- ・加工食品に多く含まれる食品添加物:インスタント食品やコンビニ食品など
- ・カフェイン・ポリフェノール(タンニン等)を含むもの:コーヒー、緑茶、ワイン、コーラなど
- ・過度な飲酒
これらは亜鉛の吸収を阻害する働きもあるので、食べ過ぎないよう注意が必要です。
亜鉛のサプリについて
食品で摂取が難しい場合はサプリメントを併用しても良いかと思います。
上記でもお伝えした通り、サプリによる亜鉛の過剰摂取は銅不足になりかねないので、必要以上に取らないようお気をつけ下さいね。
銅を多く含む食材
食品では牡蠣、するめなどの魚介類、レバー、ナッツ、大豆、ココアなどに多く含まれています。
摂り過ぎることで亜鉛を排泄してしまうので、銅を多く摂ろうとする必要はありません。
食事による亜鉛の摂取を心がけてください。
亜鉛の多く含む食材
亜鉛はほぼ全ての細胞に含まれるので、肉・魚介・種実・穀類など多くの食品に含まれています。
特に多いものとしては
牡蠣、あわび、たらばがに、するめ、豚レバー、牛肉、卵、チーズ、高野豆腐、納豆、えんどう豆、切干大根、アーモンド、落花生などです。
さらに亜鉛の吸収を高めるために
肉・魚介類などの動物性たんぱく質やビタミンC、クエン酸と一緒に取るのがオススメ
ビタミンCは、クエン酸のキレート作用(ミネラルを包みこんで吸収を高める)を強める働きがあるため、梅干しやレモンのように両方を同時に摂取すると、亜鉛の吸収率を高めてくれます。
事例
以前当院に来られていた方で、Tさんという方がいらっしゃいました。
Tさんは妊娠を希望されてから約7年。
タイミング療法からステップアップ、そして体外受精をされてから何ヶ所か転院されている状況でした。
治療中は何度か着床はしたのですが、妊娠継続が難しく流産してしまう。
その原因を探るため、不育症の血液検査を実施されました。
結果、不育症でなかったものの、銅の数値が亜鉛よりも高く、亜鉛のサプリメントを処方されたとの事でした。
その後、4回移植しても結果は陰性。
次の移植はうまくいくよう、やれることはやっていきたいという意気込みで初診に来てくださいました。
Tさんの身体は、お腹が汗ばんでいて少し冷えていて、さらに手足は極端に冷たくなっていました。
話を聞いていくと「手足が冷えるから、この冷えを改善させるためにサウナやよもぎ蒸しに行くけど、その後汗をかいて冷えてしまう」と話してくださいました。
暑がりで汗もすぐにかいてしまうけど、寒がりでもあるとことでした。
脈は「洪脈(こうみゃく)」
これは熱が強くこもっている際に出る脈です。
Tさんは、熱が入りすぎて大量の汗をかき、それにより気(エネルギー)や津液(汗)を消耗してしまっていました。
気は温める作用もあるため、少なくなることで手足冷えてしまっていたのでした。
汗が落ち着くよう、熱をとる施術を行いました。
3回目の鍼灸の時が胚盤胞移植日。
その時には、足首の冷えが取れていて、少しずつ温かくなっていました。
結果は陽性。
Tさんも「今回3回しか鍼灸していなかったから絶対無理だと思っていた。だから、すごい嬉しい」とおっしゃっていました。
その後も順調に育ち、ご出産の報告をいただけました。
まとめ
銅と亜鉛は血液中のミネラルであり、各々細胞の機能に関わる微量金属です。
銅と亜鉛は拮抗作用をもち、銅が多ければ亜鉛は少なくなり、亜鉛が多くなれば銅が少なくなるなどシーソーのような働きとなります。
銅が増えると妊娠しづらくなる傾向があるため、妊娠を希望している方の銅/亜鉛の比率は1.6未満が望ましいといえます。
国民健康・栄養調査結果の概要によると、日頃の食事で銅は足りているが、亜鉛は男女共に不足傾向があるため、亜鉛の豊富な食材を取る意識が大事です。
細かく原因を探っていくと銅と亜鉛のバランスも着床しづらい原因の一つとされます。
栄養素、そして着床しやすい身体づくりに関して聞いてみたいことがありましたらご相談ください。
参考文献
①Hidehiko Matsubayashi , Kotaro Kitaya, Tomomoto Ishikawa ,"Is a high serum copper concentration a risk factor for implantation failure?"BMC Research Notes
②日本人の食事摂取基準(2025年版)
③栄養素等摂取状況調査の結果(令和元年)
初出:2021年9月28日
加筆修正:2025年9月22日
■■【妊娠しやすい身体づくりの方式と不妊鍼灸3本柱】◆◆
数万例超の臨床実績から導き出した方式
〔①不妊鍼灸3本柱×②不妊カウンセリング×③おうち妊活〕
・不妊鍼灸3本柱(「妊娠脈づくり」「刺さない鍼」「鍼灸おすすめ日」)
・不妊カウンセリング(「妊活情報/クリニック選び」「認活」)
・おうち妊活(「妊娠力アップおうち妊活プログラム」)
東京都新宿区西新宿7-13-7 タカラビル2F
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